30年以上もの月日を経て、アメリカのCaroleさんが送ってくださったノーモア・ヒバクシャという文字と鶴の描かれたタペストリーのお写真を懐かしく眺めながら、被爆者の方々のメッセージを世界に伝えるためにご尽力くださった皆様に感謝の気持ちでいっぱいになります。
1985年、国語教師の北浦葉子さんと米国のバークシャーコミュニティーカレッジ名誉教授で平和学者のレイスロップご夫妻が創った草の根の民間外交プロジェクト『ネバー・アゲイン・キャンペーン(NAC)』は、日本のボランティアが渡航費を自己負担して単身渡米し、アメリカのご家庭に1年間ホームステイさせていただきながら、学校や教会などで日本文化紹介と共に10フィート運動で制作された原爆映画『にんげんをかえせ』やアニメ『ピカドン』・丸木位里さんの「原爆の図」のスライドなどを上映し、被爆者のメッセージを伝える草の根ボランティア活動でした。
その頃、テレビ局の報道局社会部長のもとで契約スタッフとして働いたいた私は、その募集記事を新聞で知り、NAC第一期生として1986年のに渡米しました。アラスカ州・オレゴン州・オハイオ州・ネバダ州・カリフォルニア州・ニューヨーク州などの学校や教会で被爆者のメッセージを伝えるボランティア活動を通して、25軒のご家庭にホームステイさせていただきながら、1年間に280回のプレゼンテーションをさせていただき1万3000人の人々と交流しました。
当時はまだ携帯電話もなく、SNSどころかメールもなかった時代で、渡米前のホームステイの方々とのやりとりは手紙でした。今思うと信じられないぐらい不便だったあの当時…それでも戦争のない核兵器のない世界をつくるために、国を超えて繋がろうとした人々の熱い思いで活動が広がっていきました。
2011年までにNACは、計10回のボランティア募集を行い、57名のボランティアをアメリカ・カナダの各地へ派遣しました。アメリカ38州・首都ワシントンDC、カナダなどで1万1,845回以上のプレゼンテーションを行い、37万1,219人以上にヒロシマ・ナガサキのストーリーを直接届けました。旧ソ連を含むその他11か国でもプレゼンテーションが行われました。2018年、ご高齢になったレイスロップ教授ご夫妻にとって11回目となる日本への旅は、NACをしめくくる最後の来日となりました。
現在NACはその活動を終えていますが、1985年の立ち上げから2011年までの26年間にわたり被爆体験とメッセージを世界に伝える貴重な活動を続けてくださったレイスロップ名誉教授ご夫妻と北浦葉子さんはじめ関係者の皆様に改めて心より深く感謝いたします。
被爆者の方々と被爆体験や戦争体験のない私たちを繋げてくださった日本被団協の伊藤直子さん、小西悟先生、岩佐幹三先生、ご自身が被爆されながらも広島への原爆投下の直後から被爆者の救援と治療にあたった肥田舜太郎先生、被爆者を支援し共に生きた弁護士の池田眞規先生、「世界ヒバクシャ展」を設立し非核を訴えた写真家の森下一徹先生、持参した映画『にんげんをかえせ』に出演されていた山口仙二さん、谷口稜曄さん、沼田鈴子さん、片岡ツヨさんはじめ38年前のNACで渡米前にお世話になった方々が亡くなっていく中で…言葉にならない深い寂しさを感じます。
皆様に応援いただいたNACの活動は、残念ながら終わってしまいましたが、NACの精神を忘れることなく皆様への感謝と共に、ヒロシマ・ナガサキの被爆者の方々の体験とメッセージをこれからも伝え続けていくことを心に誓います。
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