2024年05月10日

故前田智子さんを偲びながら…


「人生で初めて闘わないことを選択しました」
昨年8月、長い間 癌の治療を続けながらも精力的に仕事をされていた前田智子さんから突然のメール‥‥。

肝臓、肺、皮下、リンパなど、全身のありとあらゆるところに遠隔転移が見つかり、もう使える薬もないので、これからは積極的治療は一切行わずに家で訪問医療と看護を受けながら、犬猫たちに囲まれて過ごす選択をされたことが書かれていました。

その2カ月後‥‥
前田さんが亡くなられた知らせを受けました。

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前田智子さんは、公益社団法人静岡県聴覚障害者協会で事務局次長をされながら手話通訳士としても活躍されていました。

弊社のしげ兄さん(伊藤)が癌の告知を受けた時、ご自身のことのようにいつも心配してくださり、セカンドオピニンを強くすすめてくだいました。現在しげ兄の主治医をしてくださっている腫瘍内科医の勝俣範之先生をご紹介くださったのも前田さんでした。初診の際には付き添ってくださり、いつも気にかけてくださいました。

2017年3月3日に開催された静岡県内の聴覚障がい者の方々の集いでは、初プロデュース製作した映画「アオギリにたくして」上映の機会をつくってくださり、コロナ禍には弊社のオンライン上映でご出演くださいました。

前田さんは、旧優生保護法(1948年〜1996年)の下で不妊手術を強制された障がい者の方々が国に損害賠償を求めた一連の訴訟で、全国組織の事務局員としても忙しい毎日を送られていました。旧優生保護法のろう者の原告による静岡での訴訟を支援しながら、国を相手に裁判で闘っていました。前田さんが原告に「裁判に訴える権利がある」と話したことから裁判で証人尋問を受けるなど、かなり厳しい抗がん剤治療を受けながらも仕事や様々な活動を精力的に行っておられました。

静岡地裁から「“憲法に違反” 国に賠償命じる」と判決が出た後も
「国は絶対控訴するから、戦いはまだまだ続きます」
とおっしゃりながら、ご講演のため日本列島を縦断する新幹線の中から、何度もメールをいただきました。

その数か月後
昨年10月の突然の訃報…

がんの闘病生活を送りながらも
最後まで自らに課した使命を果たそうとされていた前田さんの姿を忘れることができません。


日本弁護士連合会
旧優生保護法下において実施された優生手術等に関する全面的な被害回復の措置を求める決議
https://www.nichibenren.or.jp/document/civil_liberties/year/2022/2022_3.html

2023年12月5日 NHK
旧優生保護法で不妊手術強制 静岡県の女性の2審始まる
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231205/k10014278831000.html

2024年2月14日 東京新聞
旧優生保護法の国賠訴訟、5月29日に最高裁弁論、夏にも判断、統一判断へ
https://www.tokyo-np.co.jp/article/309250
と記事が掲載されていました。

今なお存在する障がい者差別。
優生思想を根付かせる根源ともなった旧優生保護法の問題が解決され
被害者の尊厳を回復する最高裁判決を心より願っています。


前田智子さんの訃報に悲しみが癒えない中、昨年末、しげ兄のがんの再発の疑いが告げられ、言葉にならない大きなショックが体を襲いました。心と体が回復するまでに時間を要しましたが、前田さんが天国から「しげ兄、大丈夫!まだまだ生きてやるべきことがたくさんあるよ!」と見守ってくれています。先月から抗がん剤治療も始まり、少し時間を要しましたが、本人も周りも乗り越えていく気力が蘇えり、お陰様で元気にしています。まだまだこれからが人生だと思っています!

差別のない、人間としての尊厳が守られる社会が実現していきますように。
前田さんへの感謝を胸に
私たちも命ある限り前に向かっていきます。
posted by ぷらっとハッピー日記 at 10:26| 東京 ☀| 映画『アオギリにたくして』・アオギリ祭り | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする