2023年09月02日

それだけがただ願いなのに…〜One Wish〜(文:村田勝彦)


あっという間に9月となりました。
皆様お元気ですか?

まだまだ暑い日が続いていますが
それでも、夜は少し涼しくなり
ちょっとだけ過ごしやすくなってきました。

映像制作が続く中
なかなか動けずにおりますが…
しばらくこの状態が続きます。
じっくり取り組んでいこうと思います。

ふと、この夏を振り返る時
「アオギリ祭り」が思い出されます。

地域の皆様のアート作品の展示と共に、
ミューズの里の映画も上映されました。

人と人のつながりの大切さと素晴らしさ。
そして、その中から生まれてくる心豊かな新たな可能性。

「アオギリ祭り実行委員会」代表で画家の木村巴さんと
「べるべる会」の番井幸子代表はじめ皆様に
大変お世話になり、たくさんの気づきをいただいています。
改めて心より深く感謝申し上げます。


昨年に続き、アオギリ祭りにお力添えいただいた
小説家の村田勝彦さんから先日寄せられた文をご紹介させていただきます。


それだけがただ願いなのに…
〜One Wish〜
<文:村田勝彦>


アオギリの新緑が朝の光線を受けて、不思議な光を醸し出している。真っ白い太陽が設置されたテント上に燦々と輝き、眩しさに目を細めた。

今年も再び巡ってきた第2回目となる「アオギリ祭り in 町田 2023」。

私がお世話になっている「officeミューズの里」から歩いて2分とかからない、静かに佇む「薬師ヶ丘自治会館」にて、7月20日・21日の2日間に渡り開催された。

今年は、画家の木村巴さんが「アオギリ祭り実行員会」を立ち上げて呼びかけてくださり、食べる・しゃべる・学べる、がモットーで地域の活性化と仲間づくりを提唱するという「ベるべる会」の協力のもと、人間愛に溢れる手作りの芸術祭だった。それにしても「ベるべる会」名称の由来には思わず心がほっこりしてしまう。

小柄な体で縦横無尽に動き回り、会場設営の準備をする画家の木村巴さんのお手伝いをしながら、今年はいろいろ語ることができた。そよ風のような物腰の中に、凜然とした気持ちが一貫して伝わってくるのは、木村さんが青春期に体験した社会の矛盾や不平等からくる女性の価値、悲しくも社会から見放されてゆく子どもたちの存在と真剣に向き合ってきたからではないだろうか。そう広くない会場の畳に腰を下ろしながら、木村さんの真髄に触れられた瞬間に、哀しさをこらえてその後何故か清々しささえ感じた。

会場の片隅で静かに自分の焼いた作品を愛おしそうに並べていた陶芸家の長田佳子さんは、幼い息子を持つ主婦である。昨年同様参加され、アオギリにたくして上映の際にはハンカチで涙を拭っていたのが印象的であった。繊細にして上品な練り込み技法によって創作された作品に、来場された人々は感嘆し姿勢を正していた。

1945年8月6日広島、9日長崎に原爆が投下され78年目の夏となった。G7サミットの影響かロシアによるウクライナ侵攻で核の脅威に、刮目せざるを得なくなったのか。いずれにせよ広島を訪れる外国人は増えていると聞く。同時に核廃絶を訴える草の根活動が若い世代を中心に広がりを見せている。学校で習う歴史認識は、各国の視点によって異なる。広島、長崎の原爆資料館を訪れる外国人が増えているというのは、彼らの心の奥底に、核により世界が破滅していく脅威と、真剣に向き合い始めたからではないだろうか。

原爆により片足を切断し、さらに婚約者の戦死を知らされ絶望の中葛藤し、語り部として使命に生きる女性の生涯を描いた映画『アオギリにたくして』には、中学生の少年たちが参加してくれた。残念ながら私は上映後、彼らの感想を聞くことができなかったが、日焼けした野球少年の彼らの瞳に、いったい原爆と戦争はどのように映ったのだろうか。

「あぁ風…」この耳をふさいでも、聞こえる声がある。野津田の山里は、夕暮れと共に、ひぐらしの音色が大きくなっていった。

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村田勝彦さん、お世話になり大変ありがとうございました。
素敵な「アオギリ祭り」が毎年開催されていきますように🙏
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posted by ぷらっとハッピー日記 at 13:34| 東京 ☀| 映画『アオギリにたくして』・アオギリ祭り | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする