ドキュメンタリー映画『いのちの音色』を制作中です。
アオギリの語り部と呼ばれた広島の被爆者
沼田鈴子さんが原爆にあったのは22歳の時でした。
その同じ年齢の時に、私は沼田さんと出会い
アメリカの学校や教会で日本文化紹介と共に
「にんげんをかえせ」などの原爆映画の上映会を行う
草の根ボランティアの民間外交プロジェクト
「ネバー・アゲイン・キャンペーン」
の第一期生として単身渡米しました。
アラスカ・オレゴン・ネバダ・オハイオ・ニューヨークなどで
1年間に約280回のプレゼンテーションをさせていただきました。
渡米前にひと夏を過ごした広島で沼田さんとお話しする機会をいただきました。
帰国後、外国人向けの異文化コミュニケーション雑誌で
編集長をしていた頃に、当時勤めていた会社で企画立案し
日本で暮らす様々な国の世界の人々と共に
それまでお世話になってきた被爆者の方々の体験と
各国の出演者の両親や祖父母の戦争体験を伝える
日本語朗読劇を企画・制作しました。
プロデュースするにあたり
出演者やスタッフに、被爆者の方に会っていただき
直接、被爆者の方から話を聞く体験をみんなにしてもらいたいとの思いから
広島合宿を企画したり、長崎を訪れたりもしました。
若い頃、ネバーアゲインキャンペーンに参加させていただき
たくさんの皆様にお世話になったので、
今度は自分ができることで恩返ししながら
次へとバトンをつなげていきたいという思いからでした。
とはいえ、当時勤めていた会社の中でのプロジェクトなので
そのための様々な予算を捻出するためには、
まずは別途他の企画を立てて売り上げを出し、
劇づくりにかかるお金を捻出しなければなりませんでした。
そのために、毎月の月刊誌以外に
別冊の発行に向けての企画もしながらの日々でした。
小さな会社だったので、
編集長と言っても取材から執筆・制作・営業・流通
さらに異文化交流イベントなども全部に携わりながら、
毎月雑誌を発行するだけでも大変な状況でした。
新聞紙をかぶって会社のソファーで寝泊りしながらで、
さらに、新たな企画と劇づくりが加わりました。
今思うと正気の沙汰ではありません。
プロジェクトをきちんと会社の中で位置付けることができてこそ
やらせていただけていることでもあるため、
通常業務の何倍もの忙しさに追われる中で
不眠不休の劇づくりとなり、ボロボロ状態になりながらではありましたが、
その時の経験とその中から見えてきた様々な気づきは、
その後の人生に生かされています。
とても感謝しているのは、
当時の会社の社長がこのプロジェクトに賛同して
会社でやらせていただけたことです。
その後、独立して自ら会社を立ち上げる中で、
初めて社長の苦労や大変さがわかるようにもなりました。
様々な立場を経験して初めて見えてくることがあることも知りました。
そして、この時の劇づくりにおいても
被爆者の沼田鈴子さんに大変お世話になりました。
アメリカ・中国・韓国・フィリピン・バングラディシュ・ドイツ・スペイン、その他、
多国籍の出演者が参加する中で、戦争の中での加害と被害をしっかりと見つめながら
被爆体験を世界に伝えていく大切さを沼田さんが語ってくださいました。
沼田さんは、国を超えて世界の人々にヒロシマの心を届けることができる方でした。
みんなを連れて沼田さんに会いに広島に行った時も
待ち合わせは、いつもの広島平和記念公園の被爆アオギリの木の下でした。
現在制作中ドキュメンタリー映画「いのちの音色」の中で
その頃の沼田さんの映像を持っている広島のテレビ局にお伺いし
映像を見せていただいたのですが、
映像使用料の金額があまりにも桁違いに高すぎて
今回の映画の中に入れることは諦めざるをえず
とても残念ですが、いずれまた挑戦して描いていきたいと思います。
今年、私は59才になりました。
沼田鈴子さんが語ることのできなかった長い年月を経て
語り部となったのは、ちょうど今の私と同じ年齢の頃でした。
どんな思いで沼田さんが戦後を生き、
どんな思いで語り始め、
語り続ける中で何を感じておられたのか…
年月を重ね人生を生きてきた中で、
この年になって、改めて思うこと、分かること、感じることがたくさんあります。
微力であっても、現在制作中のドキュメンタリー映画『いのちの音色』の中で
沼田鈴子さんがアオギリに託した想いを少しでも伝えていけるよう全力を尽くして参ります。
皆様のご支援・ご協力を何卒よろしくお願い申し上げます。
🍀いのちの音色 https://musevoice.com/inochi/
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