非暴力で差別と闘ったマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師が39歳の若さで凶弾に倒れてから今年で54年となります。
ウクライナのことで胸が痛くなる日々の中、アメリカ連邦議会で行われたゼレンスキー大統領のビデオ演説を先日視聴しました。真珠湾攻撃や9.11に言及された後、キング牧師の演説から「I Have a Dream(私には夢がある)」を引用しながら、「私には必要なものがある」と軍事支援を訴える演説でした。
ウクライナに一日も早く平和が訪れることを祈りながらも、演説後のスタンディングオベーションと拍手の中、なんとも言えない違和感を覚えずにはいられませんでした。
徹底した非暴力を唱えたキング牧師は、「我々には暴力か非暴力かの選択肢はない。あるのは非暴力か滅亡かである」とインド訪問中の1959年のラジオ演説で語っています。
1963年、キング牧師がリンカーン記念堂の階段で行った有名な「I Have a Dream(私には夢がある)」の演説は、20万人以上が人種差別撤廃を求めてワシントンの連邦議会議事堂へと行進した「ワシントン大行進」の集会で行われました。
翌64年、南北戦争以来の画期的な黒人救済措置と言われる公民権法が制定され、同年ノーベル平和賞を受賞したキング牧師は、「非暴力とは黙って言いなりになることではない。社会的変化をもたらす力強いモラルのことだ」と授賞式で述べています。
非暴力を貫くキング牧師は「人種差別」と同じように「戦争」に強く反対していました。当時アメリカがベトナム戦争に揺らいでいた中で、停戦と軍隊の撤退を求め、徴兵に抵抗するよう求めていました。
晩年にはマハトマ・ガンジーとも手紙のやり取りをしていた帝政ロシアの小説家で「戦争と平和」「アンナ・カレーニナ」「復活」などの著書で知られるトルストイは、1853年のクリミア戦争に将校として従軍し、その時の体験から非暴力の思想を持つようになったと言われています。平和主義や良心的兵役拒否の推奨者として知られているトルストイは、ガンジーやキング牧師に計り知れない影響を与えています。
非戦・非暴力による平和主義を貫き、平和文化をつくろうとする人々の姿は、日本国憲法第9条の理念ともつながります。
憎悪は憎悪を生み,
暴力は暴力を生む。
ウクライナ危機で、私たちは改めて武力で平和は築けないことを目の当たりにしています。
今、もし、
キング牧師がご存命であったなら、
なんと言葉を発せられるのでしょう…。
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