2015年03月12日

3・11から4年…

3・11から4年…。
「生きるということ」を改めて深く考える日々だった。

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2010年秋に、米国ワシントンの(財)カーネギー地球物理学研究所へ広島市長のメッセージを届け、海外で初のピースライブと被爆アオギリ2世の植樹を山中先生が企画してくださり、その時のご報告をするために、今は亡き沼田鈴子さんに会いに広島を訪れたのは、3・11の一週間後だった。

まだメルトダウンも告げられず、原発事故の全容がつかめていなかった時から、沼田さんはもの凄い危機感を感じていた。あの時の沼田さんの心の叫びを今も忘れる事ができない。

3・11から4ヶ月後、沼田さんは亡くなった。亡くなる一ヶ月前、最期のお誕生日(87才)に捧げた歌「アオギリにたくして」を「平和記念公園のアオギリの木の下で子供達と一緒に歌いましょう」と話していた。「死ぬのは簡単だけど、生きて伝えなければ…」と車イスに座った沼田さんは、膝の上に握りこぶしを立てて言った。それが沼田さんと交わした最期の言葉となった。

それまで、映画に興味の全くなかった私が、映画をつくりはじめたのは、この沼田さんの最期の言葉がきっかけとなった。

結婚を3日後に控えて原爆にあい、麻酔薬もないまま大腿部よりのこぎりで左足を切断。その後、婚約者の死を知らされ絶望の淵にたち、自殺することばかり考えていたという沼田さん。その後、長い年月を経て、沼田さんが被爆体験を語るようになったのは晩年になってからのことだった。

被爆者に対する差別や偏見もある中で、本当は忘れてしまいたい、二度と思い出したくない体験を語り始めるまでに、どれ程の心の葛藤があったことだろう。

そして沼田さんは、自分の被爆体験を語るだけではなく、ハワイやマレーシア、韓国、中国などを訪れ、戦争犠牲者の慰霊の旅を続けていった。

戦後50年に、日本に滞在するアメリカ・ドイツ・スペイン・中国・韓国・マレーシア・フィリピンなど8カ国の出演者と共に被爆体験の朗読と自分たちの家族の戦争体験を伝える朗読劇「トンボが消えた日」をプロデュースした際には、沼田さんのお話を聞きにみんなで広島を訪れた。

待ち合わせは、いつものアオギリの木の下。痛みを持つ人々の声に耳を傾け、事実を直視する強さを持ち、その上で加害・被害を超えて、同じ地球に命を授かった我々が、今平和のために何ができるのか? 沼田さんのお話と普遍的なメッセージは、国籍・民族・世代を超え、みんなの心に深く響いた。

「憎しみではなく、愛の連鎖を生み出せる人になってね」。一番大切なのは「優しい心」

沼田さんの言葉は、いつも感謝と希望に満ちていた。至らないことがあっても決して人をただ批判することなく、自分と考えの違う人がいても攻撃するのではなく、いつも全身全霊で平和の大切さ、いのちの尊さを伝え、その言葉はいつも愛と思いやりに満ちていた。

沼田さんが生きる上でのモットーとされていた言葉=「出会い」「感動」「発見」「出発」
その生き様を通して、沼田さんが私たちに教えてくださった事を大切に生きていきたい。

沼田さんの半生をモデルに描いた劇映画「アオギリにたくして」は、2013年夏に完成し、昨年末までに350回を超える上映会が行われた。大手の資本等いっさい入っておらず、応援してくださる皆様からの募金と我々の借金だけで作ったこの映画は、十分な資金力もなく、宣伝力もない映画であるにも関わらず、観てくださった方々が感動を伝えてくださり、次の上映を企画してくださり、戦後70年を迎える今年、日本全国に上映の輪が広がっている。

沼田さんに初めて出会ったのは、29年前の22才の頃だった。自分の両親の世代は戦争を体験しているにもかかわらず、それまで私にとって戦争や原爆は昔に起きた過去の出来事でしかなかった。そして、被爆者の方々の話を聞かせていただいてもなお、最初はしっかりと受け止める事ができずにいる自分がいた。そんな私が、沼田さんはじめたくさんの被爆者の方々との出会い、そしてヒロシマ・ナガサキを世界に伝える中で、いのちへの深い感謝を持って生きるようになった。

「被爆体験を語り継ぐ事、それは私にとって一粒の平和への種蒔きです」と語っていた沼田さん。

「アオギリにたくして」が、今を生きる若い世代に「いのち」と「平和」を考える一つのきっかけになればと心より願っている。今回の作品は、若き青春の日々を中心に描いているが、いつか語り部となってからの後半生をより深く描いてみたいと思う。


3・11から4年…。
いくつものプレートの上に位置している地震大国日本。核のゴミの処分に筋道もたたないまま…この小さな島国の海岸線には50基以上もの原発がすでに存在している。

問題解決をしていく上で、「命の尊厳と」「自然との共生」への視点はかかせない。とするならば、今私たちはどうあるべきなのか?

一人一人の生き様が問われている。

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posted by ぷらっとハッピー日記 at 23:42| 東京 ☀| ヒロシマ・ナガサキ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする