2022年04月11日

「長崎を最後の戦争被爆地に!」ウクライナ危機に思う…

20220415_190832.jpg


「核兵器廃絶」、それは理想論ではなく、生き地獄を体験したヒロシマ・ナガサキの被爆者にとって、憎しみや苦しみを超えて、絶望の果てに見た光であり、人類と地球の未来を見据えた上での現実的な道です。

理屈を超えて「戦争や原爆は絶対にダメだ!」と、体中の細胞を震わせながら、全身全霊で伝え続けてくれた体験者の「戦争の足音が聞こえてきた時にはすでに遅く、大きな歯車が動き出したら止められなくなる。突然起きるわけではないのに、なぜ戦争が起きるまで反応できないか?」 という言葉が思い起こされます。

お世話になった、戦争やヒロシマ・ナガサキの体験者の方々が高齢化していく中で、その思いを伝えるライブを始めて、14年の歳月が流れました。

この間、核兵器の存在に象徴される人間の考え方や在り方への危機感は日々つのるばかりでした。


<被爆者の思いを世界へ>

1986年、アメリカの学校や教会で日本文化紹介と共に原爆映画「にんげんをかえせ」や「ピカドン」を上映する1年間の草の根ボランティア活動に参加した頃は、まだ米ソ冷戦時代でした。その後、ワシントンの(財)カーネギー地球物理学研究所の庭園に被爆アオギリ2世が植樹されることになり、広島市長のメッセージを持って渡米したのは、2010年秋でした。


EFBC92EFBC90EFBC91EFBC90E5B9B4E382ABE383BCE3838DE382AEE383BCE6A48DE6A8B9.jpg


最初の渡米から24年の月日が経っていましたが、肝心なことは全く変わっていないと感じました。核兵器の威力と恐ろしさを知識として知ってはいても、ヒロシマ・ナガサキの実情を知る人や、今もなお原爆症に苦しみながら生きる被爆者の存在を知る人は少なく、これでは核兵器はなくならないと感じました。

生物・化学兵器、クラスター爆弾などの使用が国際条約違反であり、民間人を標的にした爆撃が国際人道法違反であるならば、核兵器は間違いなく違法であるにもかかわらず、ヒロシマ・ナガサキで何が起きたかは置き去りにされたまま、戦後の核軍拡競争へと突き進んでいったことが最大の愚かさに思えてなりません。

恐怖や不安に操られやすい人間の心は、核兵器の脅威を感じれば感じるほど、それに対抗するためのより優れた武器や核兵器を欲しくなってしまう…。小さな一市民としてできることは限られていますが、もっともっとヒロシマ・ナガサキの実情と被爆者の声を世界に届け、核兵器のない世界をつくっていく大切さを改めて強く感じながら帰国しました。


原爆に遭った一人の女性が語り部となるまでの人生を描いた初プロデュース映画『アオギリにたくして』を持って渡米したのは2016年6月のことです。

その1か月前の2016年5月、オバマ大統領が現職のアメリカ大統領として初めて被爆地・広島を訪れ、被爆者と抱き合う姿がテレビ画面に映し出された時、被爆者の方々の念願がようやく実現したという嬉しさを感じながらも、憂鬱な気持ちのままでした。

アメリカの政治制度は外交に関わる権限が厳格に分割されているため、「核兵器なき世界」構想を唱え、ノーベル平和賞を受賞したオバマ大統領ではあっても、 共和党か多数派を占める議会の中で思うような成果をあげることができずにいました。

アメリカ上映をコーディネートしてくれた平和学者のレイスロップ氏は、「ヒロシマ・ナガサキの実情を知らないまま、簡単に原爆を落とせばよいと考える人々が増えている」と、ひどく心配していました。初のアメリカ上映後、この映画を全米に広げてほしいという参加者の声に少しの希望を感じながらも、レイスロップ氏は重い表情を浮かべ、ウォール・ストリート・ジャーナルの記事を私に手渡しました。

オバマ大統領が広島を訪れた2016年5月のウォール・ストリート・ジャーナルによれば、日本がパールハーバーを攻撃したような事をイランが万が一起こした際に、59%のアメリカ人がイランの街に核兵器を落としても良いと考えてる結果が掲載されており、共和党では81%、民主党では47%が賛成していました。


<核兵器禁止への道を!>

オバマ氏の次に大統領に就任したトランプ氏は、「核兵器のない世界」から「使える核」へと転換し、トランプ政権が2018年に発表した「核態勢の見直し(NPR)」では、核兵器の使用条件が緩和され、小型核の開発が盛り込まれていました。

通常兵器による攻撃に核で反撃する可能性も排除せず、先制不使用も否定しています。さらに、米ソ冷戦終結の後押しとなり核軍縮の流れを作った米国と旧ソ連二国間で交わされた中距離核戦力(INF)廃棄条約を、ロシア側の条約不履行を理由に停止し、条約は2019年8月に失効しました。

危険極まりない状況が続く中、その翌年の2020年、世界はパンデミックとなり、未だ先行きの見えない日々が続いています。

昨年2021年、トランプ氏に代わり誕生したアメリカのバイデン大統領は、大統領選でも核軍縮に取り組むことを公約に盛り込み、核兵器の役割を低減させ、オバマ元大統領が掲げた核なき世界を目指そうとしていました。

国連総会では、世界122か国と地域が賛成多数で核兵器禁止条約が2017年7月に採択され、2021年1月22日に発効されています。

核保有国とその核の傘に依存する日本などの国と地域はその中に含まれていないままではありますが、私が初めてアメリカで原爆映画上映をした36年前の米ソ冷戦時代では想像もできないことであり、多くの国々が核兵器廃絶への理解を示し国際条約が発効されたことは人類の進歩であり素晴らしいことだと思います。

1日も早く全ての国がこの条約に署名する道を切り開いていくことが、核兵器のない世界をつくる道だと思います。


<ウクライナ危機に思う>

2022年2月24日、国連安保理でウクライナに関する緊急会合をライブ中継で見ていた最中、ロシアから特別軍事作戦開始の一報をキャスターが報じました。

レポートしながら爆発音を聞き、防弾チョッキを身につけるウクライナのCNN記者の姿に緊張が走る中、議長国のロシアがウクライナに軍事侵攻していくのをただ傍観していなければならない、この異常事態へのショックは例えようもありません。

たとえどんな理由があろうとも、他国への軍事侵攻は絶対に許されるものではありません。その上で、思うことは… ウクライナの国境線からモスクワまで直線距離で約440km。東京から神戸の距離です。ロシアの立場に立てば、NATO(北大西洋条約機構)の東方拡大に不信感が募ることもわからないではありません。その他にも様々な要因が複雑に絡みあっていたとしても、外交交渉はなぜ失敗し戦争になってしまったのか…。

その3日後の27日、ロシアのプーチン大統領は、自国が核保有国であることに言及し、核抑止部隊を高度の警戒体制に置いたと報じられました。もともと矛盾を抱えている安全保障のための核抑止論は、この段階で完全に破綻しています。

そして、ウクライナでは未だ停戦合意に至らず、民間人も含むたくさんの命が犠牲となり、街が破壊され、すでに国内外で1100万人を超える避難民が出ています。

一度戦争が始まれば、戦うか死ぬかの瀬戸際で、想像を超える残虐な事態が起きる事はこれまでの戦争が物語っています。

ウクライナでは市民にも戦闘を呼びかけ、希望者に武器が配られています。女性や子どもたちは避難していますが、 18歳から60歳の男性市民に対してウクライナからの出国が全面的に禁止されています。避難したくても避難もできずにいる人々も多くいることでしょう。

テレビでは、自国を守るために勇敢に戦う意志を持つウクライナ人男性のコメントばかり流れていますが、みんながそうではなく、戦わない選択をしたい人だって必ずいるだろうと思います。市民が戦闘員となれば、非戦闘員との区別がつかなくなるため、多くの市民の命が狙われ犠牲になってしまいます。

ロシアの中にも、ウクライナの中にも、先の戦争の一部を見る思いがします。そして、冷戦後の無関心と無作為が戦争を招いてしまったように思えてなりません。これ以上の犠牲を出さないための外交努力にこそ命がけで取り組んでほしいと切に願います。

核保有国が「使える核兵器」の発想を持ち始めている今、私たちの考えの根底にあるものが問われています。

「長崎を最後の戦争被爆地にしてほしい」と願い、核兵器廃絶を叫び続けるヒロシマ・ナガサキの被爆者の声は、これまでもそしてこれからも、日本が世界に発信する最も大切な世界平和の実現へのメッセージだと思います。

人間が作り出した最も大きな負のシンボルである核兵器の廃絶への道は、
人類がもう一度人間性を取り戻していくプロセスでもあろうと思います。

暴力や戦争で物事を解決しようとする考え方そのものが時代錯誤であるとされる時代が来ることを祈りながら、心に平和を抱き、生き様を通して「いのちの大切さ」と「平和の尊さ」を語ってくださったヒロシマ・ナガサキの被爆者の方々のメッセージを伝え続けていこうと改めて深く強く心に誓います。
posted by ぷらっとハッピー日記 at 16:22| 東京 ☀| 映画『アオギリにたくして』・アオギリ祭り | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

近くの好きな場所


この場所を通るたび、
なぜか心が癒されます。
  • 20220411144707206.jpg
posted by ぷらっとハッピー日記 at 14:50| 東京 ☀| ぷらっと日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする